第12話 「俺がイメチェンを勧めた結果、イメチェンさせられた話。」

10歳年下の後輩がいた。背は175cmくらいで顔も悪くない、見た目は悪くない。

でも…性格にクセがある。

ある日その後輩が、「実は僕、26歳で素人童貞なんです」と、ドヤ顔で言ってきた。

別に悪いことではない。ないけど、**顔も悪くないのに、それって…なんかあるやろ。**と正直思った。

恋愛経験は浅く、元カノとはペアーズで出会って半年付き合ったけど、1回も手を出せずクリスマスディナーの夜にLINEでフラれたとか。

で、そのLINEにも「わかりました」の一言だけ返して終了。原因も聞かず、反省もなし。

…だから、俺が手を差し伸べた。

まず出会い系プロフィールの文章。

「映画が好きです。最近ハマったのは『はたらく細胞』です。そんな俺、気になったら連絡して。」

…いや、小学生か。

しかも上から目線。

全部俺が書き直した。恋愛アドバイスもし、プロフも再構築。結果、マッチング数爆上がり。

なのに本人からは「そうですね」だけ。報告もお礼もなし。もうこの時点でなんかモヤモヤ。

さらに、髪型と眉毛の話。

後輩の髪型は「お坊ちゃまカット」みたいな謎の刈り上げ。

眉毛はもっとヤバくて、上のラインを剃りすぎてて、完全に「Nikeのマーク」。

俺は言った。「まずプロに見てもらえ」と。

そこで、俺が通ってる美容院…じゃなくて、その本店を紹介してあげた。

同じ場所に来られるのはイヤやったし、そいつにはこっちを勧めた。

「行ってこい」と背中を押して、数日後。

出勤してきた彼は、見違えるように仕上がってた。

でも、言わんねん。「ありがとうございます」も「紹介してもらって良かったです」も。

普通あるやろ?

なのに「ああ、そうですね」だけ。

こっちはイライラMAX。

眉毛サロンも行って、見事に整えてきた。

ここまではまぁええ。「俺プロデュース、成功やな」と思ってた。

でも事件は起こった。

次のカットの後、飲み会で後輩が登場。

俺は凍りついた。

髪型が、完全に、俺。

ツーブロック、軽めのパーマ、前髪を流すスタイル。まんま、俺。

あれほど「それだけはやめて」って言ってたのに。

周りも「そっくりやん!」と盛り上がり、「マネされた先輩」状態に。

しかも本人は「え?そうですか〜」って顔。

こっちは冗談やなく本気でイライラしてた。

仕方なく、俺は行きつけの美容師さんに緊急相談。

「後輩に髪型パクられたんで…」

結果、センターパートにイメチェン。

これがね、意外と良かった。

周りの評判もよくて、「大人っぽくなった」と言われた。

でもね、センターパートって手入れ難しいねん。

前のスタイルの方が朝は楽やった。

それに何より、

なんで俺がイメチェンを勧めた側なのに、イメチェンさせられてんねん。

ちなみに、俺がセンターパートに変えたあと、後輩が鏡見ながらチラッとセンターに寄せる仕草してたのは見逃してない。

お前…それ以上はあかん。

今はその後輩も異動して、もう同じ職場じゃない。

当時ほどムカつくことはなくなった。

でもあの時は、出勤のたびに顔と髪型見るたびに、「俺のおかげやぞ」「でも俺は変えさせられたんやぞ」って、毎回モヤっとしてた。

世の中、イメチェンを進めた結果、自分がイメチェンさせられるってことも、あるんやな。

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