第10話 「納税者は私だ!」

〜ホタテとしゃぶしゃぶと、父の食卓防衛戦〜

ふるさと納税って、ええよな。

美味いもんが届くし、税金も控除されるし、一石二鳥。

でもな、美味すぎると家族の中で争いが起こる。

北海道・釧路市から届いた、いくら&ホタテのセット。

冷凍やのに、とんでもなくねっとり甘くて旨い。

「これ、スーパーのやつとちゃうぞ…?」ってレベル。

そしたら次男。刺身デビューしたてのくせに、

ひと口食べて「うま…」って目が輝いて、

そこから兄弟でホタテ争奪戦が始まった。

そして——

俺と嫁さんの取り分が、消滅。

だから俺は叫んだ。

「ちょっと待て、納税者は私だ!!」

「私はこの自治体に“先払い”してるんです!」

「だからこのホタテを食べる正当な権利があるんです!!」

これは父の権利や。絶対や。

似た事件がもうひとつ。

カタログギフトで選んだしゃぶしゃぶ用の高級肉。

「今晩はこれやで〜」って言い残して仕事へ行った俺。

帰宅すると…

誰も玄関に迎えに来ん。

いつもはタッチしてハグしてくる子どもたちが、出てこない。

リビング開けたら、

肉をしゃぶしゃぶしながら無言で集中して食べてた。

「お父さん<肉」

あの日、それを悟った。

でも、まぁ思った。

「本当にうまいもんは、人を夢中にさせる」

最近は、“これは課金アイテムです”って言って、

先に取り分を宣言するスタイルにしてる。自衛や、自衛。

でも、ふと思う。

うちの子どもたちが、ほんまに「美味しいもの」に反応してるって、

それはちょっと、嬉しいことでもあるなって。

ちなみに今年も、ホタテが届いた日には、

「キターーー!!」って言うてもうた。

うまいもんは、正義。

でもそれを楽しむには、戦略と覚悟とユーモアがいる。

そして俺は、今日も“取り分”を死守するため、

ふるさと納税サイトを開くのであった。

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