【第7話】 水風呂、はよ入らせてくれ。〜サウナと俺と、整わない瞬間〜

最近よく「趣味なんですか?」って聞かれて、

「まあ、サウナとか…キャンプとか…」って答えると、だいたいこう返ってくる。

「あ〜“サウナー”なんですね」

「キャンパーですか?」

ちゃうねん。

ちゃうちゃうちゃう。ほんまにちゃう。

別に俺、“サウナー”って呼ばれたくてやってるわけちゃうし、

“キャンパー”って言葉に喜んで飛びついてるわけでもない。

ただ、好きなだけ。自分が気持ちよくなれる時間がそこにあっただけ。

サウナもキャンプも、たまたま流行ってるだけであって、

俺は**“整う”って言葉すらちょっと苦手やねん。**

なんかみんなが共通で使い出した“パッケージ感”というか、

「サウナ=整うでしょ」っていう押しつけが正直しんどい。

俺にとってサウナは、“整う”じゃない。

「イッタ」や。

サウナ出て、水風呂で全身ガッと冷えて、外気浴でとろけて、

「イッタ〜……」ってなる、それがすべて。

で、今日の本題。

場所は、京都・祇園のルーマプラザ。

俺が一番愛してるサウナ。

セルフロウリュできる本格フィンランド式で、もうここ来たら戻られへん。

この日は5セット目を決めて、もう全身ギリギリまで熱めて、

息止めてサウナから飛び出して——

水風呂、一直線や!

のはずが。

掛け湯ゾーンに、優雅に深呼吸しながらオケを独占してる若手の兄ちゃんがおった。

もうね、オケ1個しかないんよ。

そのオケを、

ゆっくり手に取り、

水をすくい、

「ふぅ〜……」って空気の味わいながら掛け湯しとる。

こっちはもう体内で地獄の業火が燃え盛ってて、

「あと3秒で水風呂入らんかったら魂ぬける」ってレベルやのに!

頭ん中で鳴り響いた心の声はこれ:

「ちゃうちゃうちゃう、ちゃうねんって!何してんの!?なんで深呼吸!?早よせぇ!何風感じてんの!?風いらん風いらん!早よオケ貸して!早よ早よ早よォォォ!!」

……でも俺、

ちゃんと最後まで待った。

オケを横から奪うことなく、無言で、静かに、

怒りをこらえた顔で耐え抜いた。

兄ちゃんが水風呂に向かった瞬間、

俺は秒速でオケを取り、秒速で掛け湯して、

そのまま爆速で水風呂にダイブ。

奇跡的に、

兄ちゃんが肩まで浸かった瞬間と、俺がズボンッと入った瞬間が完全にシンクロ。

これ、もう「同時フィニッシュ」ってことで、ええやんな?

ちなみに、サウナ界の暗黙の了解として——

“出る人が優先”。

これは間違いない。

もう限界まで熱されて出てくる人は、とにかく時間との勝負。

「早く水風呂に逃がしたれ」っていう“サウナー同士のやさしさ”があるんよ。

でも今日の兄ちゃんは、たぶんまだ**“そのステージ”に達してへん**かったんやと思う。

怒りが治まったあと、思った。

俺、マジでサウナに救われてるなって。

夜勤明けで体ボロボロの時、

しんどすぎて「今日はもう無理や」って時、

そのたびにサウナ入って「イッタ…」ってなった時、

なんか世界が軽くなって、自分の心にちゃんと余白ができる。

だから、やっぱり俺は、

サウナは1人で行くもんやと思ってる。

誰にも邪魔されず、時間も気にせず、

体と心が一緒に“ぬけていく”ような感覚。

その時間が、俺にとってのご褒美や。

今日は、整ってないけど整った。

いや、イッタな。

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